大人の階段のぼる
「…なぁ。オレ、この前の部活帰りに宇宙人に拉致られてさ」
『…は?』
「大人とは何なんだと聞かれてさ」
『…宇宙人って日本語も話せるんだな』
「…一般的にこの国ではある年齢を境にして区切られていると思います、って答えたんだ」
『…宇宙人に丁寧語かょ』
「そしたらさ…オレの十年後の姿を脳内に流してきてさ」
『お前の姿を流すってなんだよ…ゼリーかょ…』
「オレの十年後の日常を一歩引いたところから眺めてるような映像だよ」
『すげぇ技術だな、そらぁはるばる地球までお越しいただけるわけだ』
「…オレの話、どこまで信じてる?」
『え?…まぁ。続けろよ、話…』
「…で、大人になったオレの思考も伝わってくるんだよな、その映像から」
『…ほぉ…すげぇな、それは』
「…まったく成長が感じられないんだよな」
『…まるで成長していない…って台詞がスラムダンクってマンガであったの思い出したわ、ははっ』
「…おい、これでも結構凹んでるんだぜ。大人になっても相変わらず考えてること、アホだしエロいしダルくて、いつも何か待ってたり探してるだけなんだ」」
『…まぁ、そんな気にすんなよ、今を生きようぜ』
「…今…かぁ…。なぁ、大人って何なんだろうな」
『知らねぇよ…もしも次に拉致られることがあればさ、知りません、解りませんってとりあえず素直に答えろよ』
「…まぁ背伸びせず、正直な人間ではいたいよな…」
『大人の階段のぉ~ぼるぅ~♪…って何か古い歌あったよな』
「…」
『キミはまだ~♪シンデレラ~…まさかお前さ、十年後に女の姿に成ってたりしてな、ははっ』
「……やめろ、もうやめろよな…ぅぅ…」
『…え…おいおい…笑えねぇ…笑えないんだけど…』