人目もはばからず

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そこまで卑下しなくてもいいじゃない…

「あ、パトカー…」
『ごくろーさまですっ、敬礼っ(ビシッ)…てか?』
「…なぁ、パトカーとすれ違う時って緊張とかするか?」
『ん?緊張?いや、別に。俺のツレ、隣の市で警察官だし。まぁ、そいつが乗ってるわけないけど、なんとなく顔を覗きたくはなるな…』
「ほぉ。そうか…」
『…お前は緊張するのか?…って、おいおい、なんかまずいことでもしてんじゃねぇの?指名手配っ(笑)』
「あぁ?違うっての」
『すまんすまん、悪かったよ(笑)(急にムキになるなっての…)』
「…なんかさ…」
『ん?』
「ガキの頃って、別に自分は何も悪いことしてねぇから、まぁ若気の至りっていうのか、むしろすれ違う時なんて顔上げてちょっと睨みつけるくらいに堂々とした姿勢をみせてたわけ、今となっては恥ずかしいんだけどさ」
『まぁ、恥ずかしいわな、それ…』
「それがさ、自分が社会に出て働くようになるとさ、なんか見方が変わっていってさ。ああいう人たちも100%の善で生まれて生きてきたわけではないんだろうとかさ。悪い心がやっぱ人間なんだからあるわけで、それと葛藤するときってあるんかな…とかさ」
『…考えすぎじゃね?とりあえず俺のツレはそういうことで悩んでねぇな。もっとシンプルに警察官になりたくてなりました、今日も頑張って地域社会の安全ために戦います!ってな具合かな。休みの日も昔と変わらんし…』
「…社会か…そう、社会なんだよ…」
『…社会?が何だよ?』
「俺さ、なんかパトカーとすれ違う時って心の中で謝ってるんだよ」
『なんでだよ?やっぱ…やらかしてんのか?(笑)…って冗談だってば…』
「いや、ある意味やらかしてんな…俺。こんな…社会の役に立てない大人になってしまってごめんなさい。あの頃の自分にも大した人間に成長できなくてごめんなさい…ってそんな具合だわ」
『…おいおい、お前泣いてんじゃ…』
「ごめんよ…ほんとに…ごめぇんょぉおぉ(嗚咽)」
『…(もっかいパトカー来ねぇかな…いや、来たら面倒か…)』