人目もはばからず

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eスポーツと同棲 噛み合わない風景

「あー…いい湯だったわーやっぱ夏過ぎたらシャワーより湯船だよな」
『…(ポチッ…カチカチャ)』
「…おーい。風呂、空いたけど?(ん?仕事から帰るなり着替えもせずにゲームしてんのか)」

『…あ、ええ。…インディーズの準新作ですけど先輩知らないっすよね(おいー…話しかけられなかったら一発入ってたのに、クソがっ…あー…死んだ)』
「…なんかケチくさいけどさ。風呂冷めるぜ?」

『…あ、ええ。(話しかけんなクソが、さっきのラウンドをいま回想してんだよ)すぐ入りますから、追い炊き勿体ないっすもんね』
「いや、別にそんな意味で言ってるんじゃないんだけどさ…」
『そうっすか…』
「まぁゆっくり浸かってけよ。…なんか眉間にシワ寄ってんだけどお前…」
『…いってきまーす』

「何怒ってんだアイツ…テレビ…ゲーム画面消してけよな…」
『(ジャー…ジャー)あー湯船苦手なんだよな…時間が勿体なくて…』
「…なんかこの格ゲー…操作してないのに画面上では戦ってるんだけど、どこか他のプレイヤー?ネットゲーム?なんなんだろこれ…」

『(…ちゃぷんっ)…まぁ…湯に浸かっちまったら気持ちいいんだけどさ…』

「秒数が出てるな…カウントダウンか…残り2分切ったけど…なんか起こるんか?」
『(ジャバジャバ…)噂通りに、相当進化してんな、あのAIキャラ…』

「…カウントダウン…あと30秒なんだけど…どうなってんのこのゲーム。一方的に一人のキャラが複数人のキャラを入れ替わり立ち代わり、圧倒して倒し続けてるんだけど…」

『(ザバー)おっしゃ。充電完了!』

「お!?早いなお前もう上がって…って全裸でブラブラ歩いてくんなよ!!」
『…先輩すんません。負けられない戦いがそこにあるんです』
「え、このゲームのこと?」
『…ぇえ(3…2…1…)』
「お前そんな格好で…(あぁ、これは俺の声が届いてないわ…)」
『…(カチッカチャ↑↓→⇔〇↓↑↘↗☓↑↓△…)』
「…(ほとんど相手にヒットしないなお前の攻撃…相手はいったいなんなんだ…)」
『…(がちゃgyたgだjflkjぁjふぁl…)』
「…」
『…あーーーー!!!!また負けた…』
「…」
『…』
「…なんなの、このゲーム…』
『…… 現在、このAIを倒したら50万円が手に入りますよっ、てな懸賞ゲームです…』
「AI…」
『世界中のプレイヤーとAIが戦って、AIに買ったら仮想通貨がもらえるんです』
「…ほぉ…」
『最初は微々たる金だったんですけどね…ひと月経たないうちにめちゃくちゃ強くなりやがって…AIに勝つために装備を整える必要があって、対戦をエントリーするのにさえ金使うんっすよ…』
「…俺は…そういうのなんか苦手なんだけど…」
『けっこう金使うんっすけど…結局全部巻き上げられて…それがあのAIの懸賞金に変わって…今はキャリーオーバーで50万円ですからねっ』
「…お前、腕に自信あるの?それなりに…」
『…まぁ、それなりに…あったんですけどね…カモられてますね…イライラするっす…』
「……そう…か…」
『…はぃ…』
「……俺の知らない間にゲームってえらい進化してんのな…ファミリーコンピュータって知ってるか、俺が出来そうなのそれくらいだわ」
『…先輩、昔過ぎません?さすがに。先輩はPSくらいからでしょ?』
「…まぁーちょっと大げさだったかも』
『…先輩、励ましてくれてんすか?…優しいっすね…』
「…まぁ…熱くなりすぎんなよ…俺は明日も早いからもう寝るわ…」
『あぁ、はい…おやすみなさい…』
「…おやすみ…」

「……あ、」
『…どうかしました?』
「いやちょっとな…。ファミリーコンピュータって、ネーミングがいいなと思ってさ。今更なんだけど。」
『家庭用ゲーム機の魁ですよね…』
「あぁいいよな、家族みんなで楽し…」
ファミリーコンピューターって伸ばさないところがいいっすよね 「タ」で切るところがいいっす』
「…。」
『…え!?』
「なんか…お前とは…。いや…なんでもねぇや…」
『あっ、何か余計なこと言いました?(ポチポチッ)』
「…おやすみ…(バタンッ!!)」
『え!?(カチカチャッ)』



 

ジョイメカファイト

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